防災研究所工作室
技術室
三浦 勉
はじめに
私が、工作室に常駐しだしてから、早1年半が過ぎ去ろうとしている。
当初の予定では、午後のみということで、工作室に常駐していたが、年度の変わり目頃に、
松尾さんの業務を手伝わせていただくことで技術者としてやりがいのある仕事に就ける
ことになった。 その中の事例とともに工作室の紹介報告をしたいと思う。
工作室の紹介
私は、防災研究所でお世話になる前は総合人間学部に所属していた。 そこで、
旋盤、フライス盤、溶接等工作に関する実務的業務を覚えた。 大学や民間企業では、
機械設計の知識やノウハウを身につけたが、実際の加工については、
大学に就職してから覚えた。
総合人間学部に在籍して2年ほど経ったある日、
防災研究所で同じく工作をしている技官の方と知り合った。 その方の話を聞いていると、
何か大きなプロジェクトをやっているなと感じたが、その当時はよく分からなかった。
しかし、現在のように防災研究所に着任して松尾さんの仕事を手伝わせていただき、
工作に関与する機会が増えるたびに実感となって分かってくる。
ところで、話を戻して工作室(写真1)の紹介ですが、工作室には、旋盤3台、
フライス盤2台、ボール盤数台等々、大学でよくお目にかかるごく普通の設備の工作室です。
その中で旋盤群は、ミリ対応旋盤1台、インチ対応旋盤1台、ベンチレース1台とある。
よく使う旋盤は、インチ対応旋盤とベンチレースです。 また、前任者の松尾さんは、
加工に適する刃物を自分で研削して作業をしていたようで、刃物として、スローアウェイチップを
メインとして使っていた私(写真2)は、こちらに来て、刃物の研ぎ方を勉強し、最近になって、
ようやくステンレスや真鍮でも切れるかなと思えるくらいの研ぎ方ができるようになった。
フライス盤は、2台あり、横型と縦型がある。横型フライスは、初めて使うので、当初違和感があったが、
現在は使えるようになった。 縦型は、以前の部署で頻繁に使っていたことがあるので、
今のところ問題なく使えている。 しかし、軽切削用で小型なので、ステンレスの切削や、
荒削りは多少時間がかかる。 溶接機は、交流アーク溶接機が1台あり、架台や枠の製作で本領を発揮している。
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写真1:工作室風景 |
写真2:旋盤作業風景 |
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写真3:測定装置(1号機) |
測定装置の開発
装置の主目的は、地中深くで内部応力を蓄えている岩石を抜き出し、
その岩石が地表面で応力開放する過程を測定するものである。
問題点は、岩石という丸い形をした物体の形状を如何に精度よく測定できるかにかかっている。
いろいろの難問はあった。 まずは、主設計を私が行い、設計における改善点などを
松尾さんや教官からアドバイスをいただいた。 また、主要部品を除く加工品も私が作った。
ここでいう主要部品とは、精度を要する部品で、それらは、松尾さんにお願いした。
全体的に精度重視で製作したので、購入品が多かった。 それだけに重厚なものに仕上がったが、
計測はできている。 しかし、大きさや重量の点で大きく、重くなったので、現在は、2号機
(1号機(写真3)の改良型)を開発している。 今度の目標は、高精度、自動化、小型軽量化である。
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写真4:実験装置 |
実験装置の開発
この装置は、断層すべり面をモデル化したものであり、1回生を対象にモデルとなる
物体の動きをPCで解析する装置(写真4)である。 また、ベルト上に、
密度の異なる3個の物体を設置し動かすものである。 また、物体同士は、
引っ張りコイルばねと板バネとで、スチフネスを与え、1軸方向に自由度を持たせている。
ベルトが回転することで、双方のバネと物体同士の連結の影響を受け、
スティックスリップをするような現象が見られる。 この装置も松尾さんと教官を交えた製作で、
私にとっては非常に勉強になりました。
私の専門は機械で、地震とはあまり関係ないもので、地震についての知識はありませんが、
この装置の製作を通してもまた、地震についての"科学"を垣間見ることができたので、
非常に有益でした。 また、この装置は学生実験用として製作しましたが、教官にお願いすれば、
一般公開時の展示にも利用できるとおっしゃられたので、そういった場面でも活躍してくれそうな
製品に仕上がっております。
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写真5:モーター制御技術 |
さいごに
防災研究所は、非常に有意義な支援生活(技術的に有意義)が送れる部署であることが、
松尾さんを通してわかりました。 松尾さんにはこれからもご指導お願いしたいという気持ちで
いっぱいである。
それと同時に私も一技官として、機械設計技術・機械加工技術・電子設計技術・制御
プログラミング技術・サーバー構築技術等々幅広い技術力を磨く努力をしなければならないと感じている。
また、技術者である以上、何か課題をもって、いつも挑戦していたいという意識は持っていたい。
防災研究所はそう思わせる部署のように思う。
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