目  次

総合技術部技術長会議報告 ―――――――――――――― 1
省エネルギーについて思うこと ――――――――――――― 2
RTK−GPSの概要 ――――――――――――――――― 5



総合技術部技術長会議報告

松尾 成光 
日時 :平成10年12月9日(水)13時30分〜15時30分
出席者:技術長8名.人事課2名(人事課課長補佐、研修掛長)
    オブザーバー2名(原子炉@、防災研@) 欠席者:技術長1名

議題 : 1.京都大学技術職員研修(第21回)について
     2.その他
 議事は、平成11年2月24日(水)〜26日(金)に実施する研修プログラムを検討したい旨 人事課研修掛の数井掛長より説明がなされた。
 平成10年7月実施された第20回京都大学技術職員研修者アンケートの集約資料が配布された。また研修プログラムの作成にはアンケート結果を鑑みてアレンジしていると話された。
 第21回に実施される研修の中味は特に変わっていません。第1日目の全体講義の講師は藤吉教授及び内本教授に依頼をお願いし承諾を得ている。タイトルは少し変更があるかも知れない。
 第二日目の施設見学では、前回と同じ立命館大学びわこ草津キャンパスに折衝中である。
 第三日目の施設実習では、前回と同じA〜Eの5コースより選択です。しかし定員との関係が有ると説明された。この施設実習・講義には、今後検討の余地が残されている。特に実習効果等の意見が出た。
 技術職員による講義の講師については、早急に講師侯補者をたて当たっていく事となった。この課題には種々の意見と討議が出ましたので一部の意見を記載します。   前回の技術長会議でも話題になった講師を公募で募る件では、第二日目の技術発表との如何なる違い有るのか?....... 等。

次回(1月中旬)は、清水・中川両技官にお願いします。 


TOP

省エネルギーについて思うこと

藤木 繁男 
 毎朝、起床する前にビデオの時計をみる。デジタル表示で時を刻んでいる。
 ラジオの時報と誤差もなく正確な時間を告げていた。
 時計機能を持ったこのビデオは、時報による補正機能まで搭載していることを思い起こさせる。
 デジタル表示の時計は、商用電源の周波数の変動が小さいことに着目して同期(シンクロ)モーターを駆動し、数字パネルを回転させたのがはじまりでした。このように時計の精度の向上はトランジスタ等の電子部品が集まった集積回路の発展に伴い、初めはTTLのICにより分周回路を構成して7セグメントLEDやステップモーターを用いてデジタル表示やアナログ表示をさせて、かつ小型化していきました。そして、より正確な時間を追求するために周波数の発振数の高い水晶の固有振動を利用して時間精度を高めているのが水晶時計ですが、ここで防災研究所の関わりのある話になります。
ある人から聞いた話ですが、フィールドで多点観測を行うとき計測時間や間隔および同期の精度を向上させるため、正確な計測時間を要求する防災研究所の研究者と、時計の製作会社により水晶時計の開発がはじめられたと聞きました。本当でしょうか?

 現在では、水晶時計は、世界中に普及して機械式の時計を駆逐しているようにも思えます。また個々の時計精度の誤差を修正するためにラジオの時報による補正も以前、地震観測に取り入れようとして研究されていたことも知り、防災研究に新しい技術を積極的に取り込んでいることに感心しました。
 計測機器の精度は、電子部品の進歩とともに格段向上し、より集積化が進み技術者にとっては集積回路(IC)の組み合わせのみを考え、ICデータの本を繰り性能を調べることが多くなりました。

 ですから私たちには、できるだけ多くの新しい情報を手に入れ活用することが求められています。が、しかし、計測機器の技術開発を求められることが少なくなりました。
 研究者には、容易に数値化したデーターが入手できる環境があり、計測段階の経験を重ねることが少なくなっているように思えてなりません。我々には、計測に対する経験は豊富にあると思いますが、化石化した経験ではなくその中に創意工夫を加えたいものです。

 子供達に教えられることばかりの私ですので、経験は別として新人が我々の技術室に入り、学校で学んだ最新の技術を我々に教えて頂きたいものです。

 省エネルギーの話に戻しましょう。個人的には乾電池について思うことがあります。高性能な乾電池を競い、大量生産して大量販売するだけで良いのでしょうか。乾電池が高性能になることは良質の資源を1回の使用で廃棄してしまう事になるように思えます。
 たとえば職場では計測やフィールド観測のおいて商用電源がなく乾電池などの一次電池を利用することがあります。計測機器の電源としては測定誤差を極力少なくするために安定化電源を使用していますから、設計によっては大半の電力を安定化回路で熱エネルギーとして消費してしまうことになります。

 例をあげますと海中で使用する投げ込み式の流速・波高計など電源としては軽量・高電圧・高エネルギー密度で、放電特性が良く、低温での動作特性も良いのでリチウム電池を使用しています。
 その特注のリチウム電池は高価で驚きます。1回投げ込み時300,000円にもなります。  インドネシアでの観測に使用した投げ込み式の流速・波高計は、電源には通称ニッカド電池と呼ばれていますが三洋電気の商品名であり、一般名のニカド電池を使用するように計測機器メーカーと交渉をしました。
 計測機器の選択では、インドネシアにおいて特注のリチウム電池が入手困難なことと高価なことが障害になりました。二次電池であるニカド電池を使用することで継続して活用されるようにと、維持コストが少なく現地の技術者で維持管理ができることを第一に考えました。

 日本で消費されている乾電池の多さは、文明の尺度にたとられます。このような中に新しい乾電池が次々と商品化され、製品が豊富にあり簡単に入手できることが資源の無駄遣いを助長しているように思えてなりません。各自が適正に使用用途にあった電池を選択するようなマニュアルは無いのでしょうか?

 例として乾電池と商用電源との電力コストを比較してみましょう。
 商用電源では1kw当たり28円と非常に安価(欧米と比較すると日本は1番高い)ですが、マンガン乾電池のエネルギー密度190(Wh/l)と、アルカリ乾電池のエネルギー密度290(Wh/l)を用いて換算してみましょう。電池で1kw電力を発生させようとすると、アルカリ乾電池LR20(単1形)で換算すると約192個必要であり、単価270円では51,840円になり商用電源の1,851倍の高価な電源になります。二次電池である乾電池タイプのニカド電池等は、500回の充放電が可能なので商用電源で充電を繰り返せば少しは有効に活用できると思います。
 また太陽電池にも疑問に思えることがあります。太陽電池は、大気を汚さずクリーンなエネルギーを作り出し、省エネルギーに大変役立つように報道されているようですが、太陽電池の製造過程における石油エネルギーの消費量や太陽電池の寿命については問題にされないのでしょうか?
 電気メーカーは一次電池や二次電池の開発を推進してエネルギー密度を高める技術を競っていますので私には興味のあるところです。

 家庭内の省エネルギーに思いを転じると、家庭の時計がいくつありますか?
 時計だけでなく電化製品の電気回路の構成部品は真空管(ちょっと古いか!)から半導体化が進み、真空管のヒーターで陰極を加熱して電子を移動させていた時代からは想像もできないほど消費電力の省エネルギー化は進んでいますが、電化製品の保有数量の増加と電化製品の付加価値や便利さを追求するあまり、待機電力を消費するものが多くなっていることが問題と思っていました。

 家庭電化製品に内蔵されている時計のデジタル表示、リモコン機能、センサー機能、設定データの記憶等の待機電力を例に考えてみましょう。
 たとえばリモコンによる制御している製品は、リモコン信号の受波回路とタイマー機能または時計機能を組み込んだ製品が大半で、常に電力を消費しながら命令を待っています。家庭電化製品リモコンの数を調べてみますと、電気炊飯器、エアコン、全自動洗濯機、電子レンジ、湯沸し器、電話そしてビデオ、CDラジカセこれらの家庭電化製品だけでも8点あり、その他テレビ等のリモコン制御用の待機電力を含めると1戸当たり13.5台だそうです。これらの電化製品は働かせなくてもコンセントにプラグを差し込んでいるだけで平均約5W程度の電力を1年中消費しています。その他、電熱線を用いた電気ポットや水洗便座は、温水にするためにヒーターを使用しているので上記した製品の数倍の電力を消費しています。
 単純な計算ですが1日あたり、例をあげれば
 5×13.5×24=1,620 (wh), 電気代は 28×1.62≒45.4(円/日)
 一ヶ月では、48.6kwh消費され電気料金では約1,360円にも及びます。たかだか1,360円ぐらいとお思いでしょうが、日本の住宅件数を2,000万戸としてかけますと272億円/月も消費されていることになります。

 最近、大手家電メーカーがAV製品の省エネ対策に取り組むことを日経が掲載していました。
 おおまかな内容としては、世界統一の省エネ基準を設定、待機電力の消費電力の7〜9割を占めている現在1〜8Wの待機電力を1W以下にすることでした。家庭内消費電力の十数パーセント近くが待機電力として消費されていますので、このような取り組みが私には興味のあるところです。

 また、日本中どこにでも設置されている飲料用の自動販売機の1台の年間消費電力が2,820kw/h〜3,500kw/hで一般家庭の0.8〜1戸分と同程度の消費電力と言われています。しかも全国には202万台もあり大型原子力発電所一基分にも及ぶそうです。(自販機全体では544万台もある)

 原子力発電所で燃やされるウランは、鉱脈から取り出して濃縮し発電するまでに、その取り出した濃縮ウランが発電するエネルギーの70%程度をすでに石油エネルギーで消費してしまっているそうです。そのうえ使用済みの核廃棄物の処理するエネルギーは見込まれていないそうです。

 1年前、ある新聞の第一面に電力料金の見直し問題が記載されていました。
 いままでの日本の電気料金は、欧米に比較すると大変割高な料金設定がされていることを知りました。内訳が明記されてあり、配分としてはエネルギーである石油の原価等は各国とも大差はありませんでした。がしかし、日本の料金設定には電源開発の経費が欧米より大きく配分されていました。

 これまでのように需要家の要求に応えるように原子力発電所や火力発電所を増やすことで電源開発を進めようとしても、発電所を設置される地域住民と環境問題で対立して行き詰まります。そのため電源開発の経費を引き下げ、欧米なみに電気料金を引き下げようとする方向を示し、エネルギー資源のないことを国民全体で考える時期に到達したのではないでしょうか。
 私もリモコンをたくさん持っていますので、大変!

※電池に関する資料はインターネットで覗いて調べました。
 http://www.mbi.panasonic.co.jp/ などがあります

TOP

RTK−GPS測量の概要

小泉 誠 
 技術室通信12月号執筆担当者からの投稿がなく、100号を目指す同通信がここで途切れる危機となり、急遽、聞いてきた話で恐縮ですが書かせて頂きました。急な話だったので時間的な余裕が無く、もう少し調べる必要があるのですがその点は御了承をお願いします。実はその後投稿があり、私の出る幕はなくなったのですが、投稿のためにいくらか時間も使ったので、臨時投稿ということで書かせて頂きました。

  建設省国土地理院近畿地方測量部及び日本測量協会関西支部との共催で去る12月1日京都テルサで開催された第17回測量技術講演会での話である。昨年も大阪の建設交流館で開催されている。当日は午後から5つの講演がありましたが、その中で「電子基準点を用いたRTK-GPS測量について」国土地理院近畿地方測量部測量課測量第一係長上村和彦氏の話を紹介したいと思います。昨年の大阪でも「GPSを用いた新しい測量事業について-地籍情報緊急整備事業とRTK-」と題して同測量部の後藤清係長が講演された。

1.はじめに
 GPSによる測位は一点で短時間で衛星を捉えて行うと誤差が非常に大きいが(100m、程度)、2点で衛星を捉えると精度が上がる。但し、この場合一点はGPSアンテナを固定し長時間の観測が必要であるため、短時間の測位には向いていない。国土地理院では平成5年から各種測量・地図作成のための国家座標系の基準点として全国に約25km間隔で図.1のような電子基準点の設置を開始し現在までに約900点の設置を行っている

図.1 電子基準点                

電子基準点は従来の三角点ではなく、電源と電話線を必要とするので場所も異なっている。電子基準点は、図.1のように塔(タワー)、GPSアンテナ,受信機・通信機器で構成されている。タワーは高さ5mのステンレス製、上部にはGPS衛星からの電波を受信するアンテナ、タワー内部には受信機と通信用機器が内蔵されている。ベース台の近くには金属板が埋設されており測量にも利用できる構造である。観測データは電話回線を通じてつくば市の国土地理院に集められ解析処理されている。この結果全国900カ所の電子基準点の位置変動がわかり、日本列島の地殻変動の様子がわかる。
 さてこれからお話しするRTK-GPS(Rial Time Kinematic GPS)とは超高精度衛星測位システムのことである。キネマティックとはスタティックに対する言葉で動的という意味をもつ。一言でいうとある場所の位置を数cm程度の精度で決定できる測位システムである。加えて測定時間が非常に短いという長所がある。

2.RTK-GPSの測位システム
図.2 RTK-GPS測位システムの概要
                       (周回GPS衛星)
      (移動局)                   (電子基準局)

 電子基準局では地上約2万kmを周回する複数のGPS衛星から信号(C/Aコード)と搬送波の位相が受信され、電子基準局の位置および位相データが1.5GHzのDMCA無線(Digital Multi Channel Acsess)で一旦山上のDMCA制御局に伝送される。このデータはそこから約20から30kmの範囲で全方位に送信される。移動局では求めようとする場所で、GPS衛星からの信号をGPSアンテナで、電子基準局からのデータを背中に背負った無線機アンテナで受信、携帯の移動局GPS受信機でその点の位置が計算される。

3.講演会の内容
さて前置きの方が長くなってしまいましたが、この測位システムはまだ実験段階で実用にはなっていません。この電子基準点を用いたRTK-GPS測位に関する公開実験は国土地理院と郵政省電気通信局などが共同で、関東地区および関西地区において昨年10月より始まっており、今年度も東海地区や北海道地区でも行われています。今回の講演会では神戸市大倉公園内にある電子基準点「神戸中央」のごく周辺に測量杭(3点)の三角網を設置し、計3種類の異なった測位方法で実験が行われた。一つは周囲の三角点からスタティック測位(静的測位)、一つは鋼巻尺と水準儀による測位、もう一つはRTK-GPS測位による方法である。因みに上の三角網の一辺の距離は約8m、8.5m、11mぐらいの大きさである。RTK-GPS測位とスタティック測位の比較では水平距離で最大較差3mm、高さでは最大較差18mmであった。RTK-GPS測位と鋼巻き尺・レベル測位では水平距離で最大較差は5mm、高さの差は最大5mmであった。その観測結果からRTK-GPS測位は今後3・4級の公共測量(*)に使えることが可能となった。
 衛星の搬送波の位相データを伝送する手段として、携帯電話・PHS・無線機・MCAなどがあるが、伝送範囲、伝送遅れ、バンド巾、費用が安い点などからDMCAが有効であるらしい(2700円/月)。特徴である測定時間は移動局で用いるGPS受信機の立ち上げ(初期化)に約1分程度、測定時間は3秒位と報告された。今後この測位は、公共測量・工事測量・GIS・地下埋設の調査・車の運行管理・船舶の接岸誘導・レジャーで使われる可能性がある。装置の価格はまだ製品として発売にはなっていないが現在ではん百万円はするようである。ただ最後にまとめで話された事で少し気になることがあった。それは周回GPS衛星の入れ替わるところで2〜3cmのシフトがあることである。また衛星配置により時々刻々と誤差分布範囲が変化することである。このあたりの問題が今後どのようにクリアーされるのか注目したいものである。また現在(社)日本測量協会で器械が借用出来るということである(**)。

参考文献とHP
第16回測量技術講演会資料(平成9年11月):建設省国土地理院近畿地方測量部・日本測量協会測量部関西支部発行
 第17回測量技術講演会資料(平成10年12月) :同上
通産新報(1997年10月15日):?
(*) :GSI(国土地理院)のホームページ(http://www.gsi-mc.go.jp/)参照
(**):RTK-GPS実験用機器貸与規程:http://wwwle.mesh.ne.jp/J-Survey/rtk-9.html

TOP

dptech@adm99.dpri.kyoto-u.ac.jp

技術室通信に戻る