観測所で働く

桜島観測所について

 防災研究所は、各地に観測所や観測施設を有しており、様々な研究がすすめられています。現在、技術職員が⽀援をしている観測所は4か所あり、私はその中のひとつである⽕⼭防災研究センター桜島⽕⼭観測所(⿅児島県)で働いています。桜島⽕⼭観測所は、⽇本で最も活動的な⽕⼭である桜島をはじめとする桜島以南の薩摩硫⻩島、⼝永良部島、諏訪之瀬島などの⽕⼭を研究対象とし、⽕⼭活動をリアルタイムで観測できるように多数の観測点を整備しています。

観測所での業務紹介その1

■ 観測機器の保守、点検

 各オンライン観測点からのデータが正常に伝送、集積されているか観測所で確認し、問題発生時には、原因を調査して復旧作業をします。桜島島内には、オフライン観測をしている観測点もあるので、2,3カ月ごとにデータ回収と点検に回っています。また、桜島火山観測所には、ドラムに記録用紙を巻き付け、その記録紙に煤を掛けて、地震波形を記録する煤書き記録装置があります。この煤書き記録装置での観測は、観測所設立以来継続してきており、毎朝の記録用紙の交換及び観測機器の点検作業を技術職員が担当しています。重要な業務の一つとなっています。

観測所での業務紹介その2

■ フィールドでの観測、調査について

水準測量観測

 桜島では、地面の高さを誤差1mm以下の精度で測定する「水準測量観測」を毎年秋に実施しています。水準測量観測を継続することにより、桜島の地面の変動をとらえることで、マグマの蓄積状況を推定するための大切な観測となっています。

南岳及び昭和火口の調査

 桜島火山観測所では、ドローンを用いて火口上空からの撮影や、サーマルカメラによる温度測定をしています。火口内の状態を安全に把握するための新しい技術として、現場での観測に取り入れようとしています。

降灰量調査

 桜島が噴火した際に大量の火山灰が降下すると予想される場合は、噴煙の流れた方向および火山灰の降灰量を測定調査します。降灰量調査は、調査した地点ごとの火山灰の堆積量や回収した火山灰試料から、粒子の大きさや成分を分析することで、火山の活動状況の評価に役立っています。

観測所での業務紹介その3

■ 離島での観測点設置、保守

 鹿児島県の離島火山(口永良部島、諏訪之瀬島、薩摩硫黄島など)にも観測点を設置し、地震や地盤変動の常時観測をしています。

 観測所から観測状況が分かるように携帯回線などを駆使し、オンライン観測をしています。データ伝送や観測データに異常が発生した際には、現地へ出張し、メンテナンスを実施することもあります。

 例えば口永良部島では、新岳火口および古岳周辺に設置していた観測点が、2015年の噴火により被災しました。その被災状況を確認するため、山頂まで登山して、観測点座標をもとにドローンを飛ばして、現地の状況を確認しました。その噴火から10年経過した2025年に、山頂付近に新規観測点を整備することができました。

メッセージ

 私は、2016年に採用されて以来、桜島火山観測所で日々観測と研究を支える仕事に携わっています。

 地道な点検や保守作業を通して、常に正確なデータが得られるよう努めています。火山という予測不能な自然を相手にするこの仕事は、まさに火山観測の最前線であり、異常をいち早く察知し、迅速に対応する力が求められます。

 一般の方が立ち入れない場所での作業もあり、観測点の保守やドローンを使った火口の調査、水準測量など、多様な技術を学ぶ機会があります。大変な場面もありますが、観測を止めないという責任感がやりがいにつながっています。

 自然が好き、フィールドが好き、そんな方にはこの仕事はきっと合っているはずです。