ヤマザキトモヤ
平成17年4月採用
防災研究所は各地に観測所施設を有しており、災害の最前線での研究がすすめられています。現在、技術職員が業務を担当している観測所は5つあります。筆者はその中のひとつ、鹿児島県の火山活動研究センター桜島観測所に2006~2007年の2年間赴任していました。
桜島観測所は、日本でも有数の活火山である桜島の島内に位置しており、噴煙をあげる山体をすぐ間近で見ることができます。島内・島外には無数の観測点が整備され、地震計や傾斜計、GPS等の観測データがリアルタイムで観測所に集積されます。桜島には6000人余りの住民が生活しており、観測所は島での安全な暮らしを守る重要な役目を担っています。
筆者は前職ではSEでしたが電子・情報の試験区分で防災研究所に採用され、1年間宇治キャンパスで観測業務に携わった後に桜島観測所に赴任しました。鹿児島にはそれまで縁はなく、活火山を見たのもはじめてでした。次項目では淡々と観測所での業務を紹介していますが、慣れない土地であまり一般的でない仕事をすることに最初の一年は大いにとまどい、周りの方に迷惑を掛け続ける日々でした。
桜島観測所で筆者が担当した業務として以下のものが挙げられます。
火山観測では噴火のわずかな兆候も逃さないよう観測機器、観測網は常に最善の状態を維持しておく必要があります。観測所に集積されるデータを毎日チェックし、異常があれば原因解明と復旧にあたります。トラブルの要因は、機器やネットワークの不具合、ソーラーパネルへの降灰による電源喪失、動物による断線など様々です。
桜島では毎年、山体の膨張を観測することで地下のマグマの変動を推定しています。例えば水準測量では島を1周するルートの起伏を誤差1mm以下で正確に測量し、長年積み重ねた測量データから将来の火山活動の傾向を予測します。
桜島観測所では鹿児島の離島にある火山も研究対象となっています。離島火山では火口までかなり接近することができ貴重な観測データを得ることができます。離島では観測機器のための電源供給やデータ伝送を自前で用意する必要があります。そのための様々な工夫や準備が求められます。離島に渡ると物資の調達が難しくなるため、機器の調達や設定、じ具の工作、荷物の梱包など事前準備には特に念を入れます。
日々の通常業務としては、集積される膨大なデータのチェックや整理作業があります。“すすがき”と呼ばれる、煙のすすで真っ黒にした用紙に針で地震波形を描くレトロな機械もここでは現役です。すすがきの用紙交換や保守も技術職員の仕事です。
桜島観測所での2年間を終えた後、筆者は宇治キャンパスで建築構造に関する実験を支援しています。業務内容は大きく変わりましたが観測所で学んだことは現在の業務にも多く活かされています。特に、防災の最前線の現場で研究者・先輩と過ごしたことで仕事に対する意識の面が大きく変わったのではないかと現在、感じています。
桜島観測所に限らずどの観測所の業務も大変な仕事ですが、日常では経験できない貴重な体験ができることが魅力のひとつです。例えば桜島観測所の業務では一般の方が立ち入れないような距離で火山の迫力ある姿を見ることができます。これを読まれているみなさんも是非その現場へ足を踏み入れてみてください。